*以前に書いた「地獄変」を一度読んだ人も、初めての人ももう一度「地獄変」を読み返してから以下の文章を読んでいただければ幸いです。
世の中には才能のある人がたくさんいます。
小学生の時学年で一番勉強のできた子、一番運動神経が良かった子その人達はみん
な学者になったり、プロスポーツ選手になったりしてるのでしょうか?
才能っていったいなにをもって才能というのでしょう?
告別 (宮沢賢治著「春と修羅」第二集 抜粋)
おまえのバス(楽器の名前)の三連音が
どんなぐあいに鳴っていたかを
おそらくおまえはわかっていまい
そのたのしさは おれを草葉のようにふるわせた
もしもおまえがそれらの音を自由にいつでも使えるならば
おまえはかがやく天の仕事もするだろう
けれどもいまごろちょうどおまえの年ごろで
おまえの素質と力をもっているものは
町と村との一万人のなかになら
おそらく五人はあるだろう
それらのひとのどの人もまたどのひとも
五年のあいだにそれを大抵無くすのだ
生活のためにけずられたり
自分でそれをなくすのだ
すべての才や力や材というものは
ひとにとどまるものでない
ひとさえひとにとどまらぬ
おまえのちからがにぶり
ふたたび回復できないならば
おれはおまえをもう見ない
なぜならおれは
すこしぐらいの仕事ができて
そいつに腰をかけているような
そんな多数をいちばんいやにおもうのだ
みんなが町で暮したり
一日あそんでいるときに
そのさびしさでおまえは音をつくるのだ
多くの侮辱や窮乏の
それらを噛んで歌うのだ
もしも楽器がなかったら
いいかおまえはおれの弟子なのだ
ちからのかぎり
そらいっぱいの
光でできたパイプオルガンを弾くがいい
二十五・一0・二十五
作者に大変失礼ですが、原文を載せるとかなり長くなるし理解の難しいところもあるので、半分以上削除しました。
宮沢賢治は30才まで教鞭をとりその後、農民の貧しさにうれい自ら農業に転じ、肺を患い37才で亡くなっています。これは学校を去る年に書かれたものです。
